【ボイシングとは?】楽器ごとのボイシングを詳しく解説/日本音楽能力検定協会

  • HOME
  • ブログ
  • 【ボイシングとは?】楽器ごとのボイシングを詳しく解説/日本音楽能力検定協会
日本音楽能力検定協会です。
今回はボイシングについて各楽器ごとに詳しく解説させていただきます。
音楽検定受検はこちらから


ボイシングとは?

ボイシングとは、和音の構成音をどのように配置するかを決める技術のこと。
各楽器ごとにボイシングの特徴が異なるので、それぞれ詳しく説明させていただきます。

1.ピアノのボイシング

基本的な考え方
•楽器の性質上演奏に両手を使用するため、低音と高音に広がったボイシングが可能。
•ルート音(最低音)を省略したり、テンション(9th, 11th, 13thなど)を追加することでジャズやポップスらしい響きになる。

ピアノのボイシング例

(1)クローズドvsオープン・ボイシング
• Cmaj7(C, E, G, B)
• クローズド・ボイシング(音域が狭く、密集した形)
• 右手:C – E – G – B
• オープン・ボイシング(音を広げることで響きが豊かになる)
• 右手:E – G – B
• 左手:C(オクターブ低い位置)

(2)ジャズ的なボイシング
• ルートを弾かず、テンションを加えることでジャズらしい響きにする。
• 例: Cmaj9(C, E, G, B, D)
• 右手:E – B – D – G
• 左手:C(省略可)

(3)ドロップ・ボイシング
• Drop 2(2番目に高い音を1オクターブ下げる)
• 例: Cmaj7 (G – B – C – E) → G を1オクターブ下げて (C – G – B – E)
• 低音がしっかりするため、バッキングやアンサンブルに適している。

ピアノ検定受検はこちらから


2.ギターのボイシング

基本的な考え方
•弦ごとに音を分けて弾くため、物理的に押さえやすい形を工夫する。
•ルートをベースに任せることが多く、4~5音のボイシングを使うことが一般的。

ギターのボイシング例

(1)クローズドvsオープン・ボイシング
• Cmaj7(C, E, G, B)
• クローズド(狭い範囲)
• E形: 8フレットで「X-8-9-9-8-X」
• オープン・ボイシング(音を広げる)
• A形: 「X-3-2-0-0-0」

(2)テンション・ボイシング
• Cmaj9(C, E, G, B, D)
• ジャズっぽいボイシング
• 「X-3-2-4-3-X」
• ポップス向けのオープンコード
• 「X-3-2-0-3-0」

(3)ドロップ・ボイシング
• 例: Drop 2でCmaj7
• 基本形(クローズド): 「X-3-5-4-5-X」
• Drop 2(2番目の音を1オクターブ下げる): 「X-3-2-4-5-X」

ギター検定受検はこちらから


3.ベースのボイシング

基本的な考え方
• 基本的に単音を弾くが、コードを意識した音使いが重要。
• ルート音(Cなど)を弾くだけでなく、3rd, 5th, 7thを活用する。

ベースのボイシング例

(1)ルート+3rd/7th
• Cmaj7(C, E, G, B)
• ルート+7th(CとB): 「C – B」
• ルート+3rd(CとE): 「C – E」

(2)ウォーキング・ベース
• Cmaj7をベースで弾く場合(コードトーンを意識)
• C – E – G – B – A – G – F – E(テンションを絡めた動き)

(3)スラップ奏法でボイシング
• ルート+オクターブ+5th
• C – G(オクターブ上) – E – G

ベース検定受検はこちらから


4.ブラス(ホーンセクション)のボイシング

基本的な考え方
• トランペット、トロンボーン、サックスなど複数の楽器がいるため、音の配置を工夫することでリッチな響きを作る。
• 「ルートを低音楽器に、上の音を高音楽器に」という原則がある。

ブラスのボイシング例

(1)4管編成のCmaj7
• トランペット1 → B(7th)
• トランペット2 → G(5th)
• トロンボーン → E(3rd)
• バリトンサックス → C(ルート)

(2)クラスター(密集した響き)
• Cmaj9のクラスター
• トランペット1 → D(9th)
• トランペット2 → C(ルート)
• トロンボーン → B(7th)
• バリトンサックス → G(5th)

トランペット検定受検はこちらから


5.ストリングス(弦楽器)のボイシング

基本的な考え方
• ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどで音を分担し、コードの響きを滑らかにする。
• 開放的なオープン・ボイシングを多用。

ストリングスのボイシング例

(1)Cmaj7の基本的な配置
• ヴァイオリン1 → B(7th)
• ヴァイオリン2 → G(5th)
• ヴィオラ → E(3rd)
• チェロ → C(ルート)

(2)分散和音的な動き
• ヴァイオリン1 → G – B – D(上昇)
• ヴァイオリン2 → E – G – B(上昇)
• ヴィオラ → C – E – G(上昇)
• チェロ → C – G(オクターブ)

ヴァイオリン検定受検はこちらから


バンドにおけるボイシングの活用

バンドにおけるボイシング(Voicing)は、楽器間でコードの構成音をどのように配置するかを決定する重要な要素です。これにより、曲の音の厚みや広がりを作り出すことができます。以下にボイシングの基本的なアプローチを紹介します。

1.コードの構成音を理解する

最初に、使用するコードの構成音を把握します。例えば、CメジャーコードはC, E, Gの3つの音からなります。バンド内でこれらの音をどう配置するかが、ボイシングのキーとなります。

2.各楽器の役割を考える

バンドの各楽器には役割があり、ボイシングはその役割に合わせて決めます。例えば:
• ギターはコードを構築するため、ベース音を担当したり、リズムに合わせてコードの主要な音を弾いたりします。
• ベースはコードのルート音を演奏し、和音の基盤を作ります。
• ピアノやキーボードは、和音を広げたり、アレンジによってコードに対する補完音を加えたりすることができます。
• シンセサイザーやストリングスは、和音をリッチにするために広がりを与えます。

3.オクターブとインターバルの配置

ボイシングを工夫するために、オクターブやインターバル(例えば、5度や7度など)をうまく利用します。例えば、ギターでCメジャーコードを弾く際に、Cを低いオクターブで弾き、EとGを高いオクターブで弾くことで、広がりを持たせることができます。

4.内声と外声の配置

コードの中で、外声(コードの最も高い音と低い音)を定め、内声(その間の音)を他の楽器で補完する方法も効果的です。例えば、ピアノがコードを演奏するとき、左手で低音(ルートや5度)、右手で内声(3度や7度)を演奏することが多いです。

5.オープンコードとクローズドコードの使用

• オープンコードは、弦楽器でよく使われる配置で、コード内の音が他の音と間隔を持たずに開いています。これにより、響きが広がり、豊かなサウンドが得られます。
• クローズドコードは、音が密接して配置されるため、よりタイトで集中した音になります。例えば、ジャズやフュージョンでよく使用されます。

6. アレンジによる変化

ボイシングは曲の部分ごとに変化させることが重要です。例えば、サビでは和音を広げ、静かな部分ではよりシンプルにするなど、アレンジによって動的に変化を加えることで、曲に深みと変化を持たせることができます。

7.ボイシングの工夫(トライアド、7thコードなど)

• トライアド(3和音)や7thコード(7度を加えたコード)のバリエーションを使用することで、より複雑な響きが得られます。例えば、Cメジャー7(C, E, G, B)を使うことで、よりジャズ的でリッチなサウンドが作れます。
• コードの構成音を一部省略して、他の楽器に担当させることも一つの方法です。例えば、ベースがCを弾いて、ギターがEとGを弾くなどです。

8.シンコペーションとリズムの調整

ボイシングはリズムと密接に関わります。特にコードのタイミングをズラすことで、よりリズム感を強調したり、逆に静かな部分でメロディに集中するなど、音の配置だけでなく、リズム的なアクセントを考慮することも大切です。

まとめ

バンドにおけるボイシングは、各楽器の特性や役割を理解し、コードの構成音をうまく配置することが鍵です。全体としてバランスを取りながら、音の広がりや厚みを作り出すことが求められます。

オーケストラにおけるボイシングの活用

オーケストラにおけるボイシングは、各楽器セクション(弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器、そしてハープやピアノなど)を活かして、コードや和音の構成音をどのように分配するかに関わります。オーケストラでは、ボイシングが音の豊かさや響きの立体感に大きな影響を与えるため、その配置には慎重な工夫が必要です。以下、オーケストラにおけるボイシングの方法について詳細に説明します。

1.楽器セクションの特性を理解する

オーケストラにはさまざまな楽器が存在し、各楽器の音域や音色が異なります。ボイシングの基本は、これらの楽器の特性に応じて和音をどう分配するかにあります。
• 弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)は、和音のメロディアスな部分や中音域を担当します。弦楽器は音域が広く、豊かな倍音を持つため、コードの基本音や高音部分を任せることが多いです。
• 木管楽器(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット)は、和音の中でも特にメロディックな要素や装飾的な要素を担当します。これらの楽器は柔らかく温かみのある音色を持っているため、和音の内声部分や、高音域で和音のリズム的な役割を果たすことが多いです。
• 金管楽器(トランペット、ホルン、トロンボーン、チューバ)は、和音の力強い響きを提供します。金管楽器は主に和音のルート音や5度、7度などを担当し、強調やアクセントを加える役割を持ちます。
• 打楽器(ティンパニ、シンバル、スネアドラム、その他)は、ボイシングにおいては主にリズムを担当し、和音に対して打撃的な要素を加えますが、和音の一部として音の響きをサポートすることもあります。

2.オーケストラでの和音の配置

オーケストラのボイシングでは、和音の各音をどの楽器セクションに配置するかが重要です。一般的な方法としては、以下のような配置が考えられます。
• 低音部(ルート音、5度):
• コントラバスやチューバが和音のルート音を担当することが多いです。これにより、和音の基盤が確立され、全体の響きが安定します。
• チェロも低音部を担当し、特に和音の5度やその他の低音を弾くことがあります。
• 中音部(3度、7度など):
• ヴィオラや木管楽器がこの役割を果たします。ヴィオラは特に和音の中音域を担当し、豊かな響きを提供します。
• クラリネットやオーボエも中音域の和音を担当することが多いです。
• 高音部(3度、5度、9度など):
• ヴァイオリンが高音部を担当し、和音の主要な音(例えば3度や9度)を強調することが一般的です。
• フルートやピッコロが高音部で和音を補完することもあります。

3.オクターブの使い分け

オーケストラでは、各楽器が異なるオクターブで同じ音を演奏することが多いため、ボイシングを工夫することが求められます。例えば、ある和音のルート音をコントラバスで低く弾き、同じ和音の5度をチェロやホルンで演奏し、3度をヴァイオリンで演奏することで、音の広がりを生み出します。

オクターブを使い分けることで、和音が一層豊かになり、全体のサウンドに深みを加えることができます。

4.ダイナミクスとアーティキュレーション

ボイシングの際には、和音のダイナミクス(音量)やアーティキュレーション(発音方法)も重要です。例えば、和音の最も重要な部分を強調したり、和音の中での特定の音を控えめにすることで、和音に対する響きのバランスを取ります。
• クレッシェンド(音量の増加)やデクレッシェンド(音量の減少)を使って、和音の展開や感情的な表現を高めます。
• アーティキュレーション(スタッカートやレガートなど)を使い分けることで、和音の音色や表情を調整します。

5.特殊な和音配置(ジャズや現代音楽の影響)

オーケストラにおいても、現代音楽やジャズの影響を受けたボイシングが使われることがあります。例えば、7thコード、9thコード、さらには11thや13thコードを使って、和音に複雑さを持たせることができます。

これらのコードをオーケストラの中でうまく配置するためには、和音の内声に9度や11度などを加え、音を広げたり、特定のセクションに重点を置いてアクセントをつける方法が考えられます。

6.和音の省略

オーケストラでは、和音の一部を意図的に省略することもあります。例えば、特に目立たせたい音を強調し、その他の音を省略することで、サウンドの焦点を定めることができます。例えば、和音の5度を省略し、3度と7度に焦点を当てることで、和音により緊張感を持たせることができます。

まとめ

オーケストラにおけるボイシングは、楽器ごとの音色と特性を活かしながら、和音の各成分をどの楽器セクションに割り当てるかを工夫するプロセスです。和音の基盤を低音楽器が支え、中音域と高音域で豊かな響きが加わり、全体の音のバランスが作られます。また、オクターブやダイナミクス、アーティキュレーションを駆使することで、音楽的な表現が深まります。

音楽検定受検はこちらから

お申し込みはこちら

音楽検定のお申し込みは
こちらからお願いいたします。