【生まれつき音痴は存在しない！】歌の音痴を改善するための具体的方法/日本音楽能力検定協会

日本音楽能力検定協会です。
今回は歌の音痴を改善する方法および考え方について詳しく解説させていただきます。

音程の音痴（ピッチ音痴）の原因として、「音を正しく聞き取れない」 または 「正しい高さの声を出せない」 という2点が考えられます。この2つの問題を解決するためには、「音感を鍛える」「声帯をコントロールする」という2つのアプローチが必要になります。

本記事では様々な視点から音痴改善法をお伝えいたしますが、全てがあなたにとって効果的であるかどうかは分かりません。
ご自身が当てはまると思うものを一つずつ試してみることをお勧め致します。

1.まずはどれくらい音程がずれているか確認する方法
2.音程を正しく取るためのトレーニング方法
3.生まれつき音痴は存在しない！音痴は必ず治る！
4.なぜ音痴になったのか？

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1.まずは自分がどれくらい音程がずれているか確認する

実際のトレーニングを始める前に、まずは「自分がどのくらい音程を外しているのか」 を把握することが大切です。
ご自分の歌をスマホのボイスメモなどで録音して聴くのが最も簡単な方法ですが、ここで問題となるのは、
・自分で聞いてもどこがずれているのか分からない
・ずれている箇所が分かっても、どのように修正すればいいのか分からない
のでは意味がありません。

音痴な方の中には「耳が悪い」という方も多く見受けられるため、聴覚的にではなく視覚的に音程のずれを確認する方法がおすすめです。

視覚的に音程を確認する方法①「カラオケ採点機能」

最も簡単な方法はカラオケの採点機能です。歌う音程がそのまま表示されますので、この音は高い方にはずれている、次の音は低い方にはずれているという風に視覚的に確認することが可能です。
1曲を通して練習すると細かい部分に意識が回らなくなるため、Aメロの１フレーズごとに区切って、どこがどう外れているのかを確認してください。

視覚的に音程を確認する方法②「DTMのピッチ補正機能」

この方法は初心者の方や作曲経験のない方には多少難易度が高いかも知れませんが、楽器の打ち込みやレコーディングなどを行うDTMソフトなどでは、歌をレコーディングすると音程を視覚的に確認することが出来ます。
その後、ピッチ補正機能で全ての音程を正すことが出来るので、補正前と補正後の音程を見比べると、どの音がどのように外れているのかを視覚的に確認できます。

視覚的に音程を確認する方法③「チューナーアプリ」

本来はギターやベース、管楽器などのチューニングをするために使用するアプリですが、チューナーアプリに向かって声を出すと、その音程を計測することが出来ます。
例えばドの音を声に出して、チューナーの針が「Ｂ」になっている場合は半音低く、「Ｄ」になっている場合は全音高く外しているということになります。
声を調整して「Ｃ」の真ん中に針が来るように調整することで、声帯のコントロール感を養うことが出来ます。

2.声帯をコントロールし、正しい音程の声を出す練習法法

音痴の方が最も苦手とするのは「声帯のコントロール」です。
耳が悪いことが原因であるとよく言われますが、音痴の方の歌をよく聞いていると、高くなる音程の個所では高く歌おうとし、低くなる場面ではちゃんと音程を下げようとしているのです。
そもそも、好きなアーティストの歌を覚えてカラオケなどで歌おうとしているということは、音痴ではない人と同じ歌を聞いて同じように感動しているということが分かります。
つまりインプットは同じように出来るのですが、アウトプットが苦手であるという可能性が高いのです。
この項ではインプットは出来るがアウトプットが上手に出来ないという前提のもと、声帯をコントロールし正しい音程を出すための練習方法をいくつかご紹介いたします。

1.ピアノを使った音程トレーニング

ピアノの音は最も耳に良いとされ、音程トレーニングはピアノを使用することが一般的です。
1.シンプルなメロディ（童謡など） を聴く
まずはドレミなどの簡単な音階を弾きながら、ひとつずつ音程を狙って発声していきます。
2.慣れるに従ってドレミレドー、ドミソミドー、ドレミファミレドーなどと数を増やして複雑にしていく。
3.実際の歌を歌ってみる。※この時おすすめなのは童謡などの簡単な歌です。キラキラ星やチューリップなど、簡単な曲を選んで一つずつ音程を確認しながら歌いましょう。

2.ハミング練習

「ん〜」とハミング（鼻歌）で声を出すと声帯のコントロールがしやすく、音程を合わせやすい。
ドレミなどの簡単な音階や先ほどの童謡などをハミングのみで歌ってみましょう。

3.スライド発声（グライディング）

声帯をどのようにすれば音程が高くなり、また、どのようにすれば音程が低くなるのかを確認できる練習方法です。

1.「あーーー↑」 と低い音から高い音へ ゆっくり上げる※甲子園のサイレンのイメージ
2.「あーーー↓」 と高い音から低い音へ ゆっくり下げる※高い所から落ちるイメージ
3.ピアノの 「ド→レ→ミ→ファ→ソ」 に合わせて、声をスライドさせる

3.音痴は本当に治るのか？

赤ちゃんの産声の周波数がほぼ共通していることは、生まれつきの音痴がほぼ存在しないことを示唆しています。

新生児の泣き声の周波数は一般的に300Hz～600Hz程度で、性別や人種問わず多くの赤ちゃんが似たような音程を発します。これは、声帯の長さや発声器官の構造が未発達で個人差が少ないためです。

音痴は先天的か後天的か？

•ほとんどの音痴は後天的
音痴には大きく分けて「音の高さを認識する能力（聴覚的要因）」と「声で正しく再現する能力（発声的要因）」の問題がありますが、先天的に音の違いがわからない「先天性音楽失認（アムジア）」の割合はごくわずか（1～5%程度） です。
つまり、大半の音痴は後天的な経験不足や間違った発声習慣によるものです。
•赤ちゃんは音程を本能的に発声できる
産声に一定の周波数があることや、乳児が母親の声のピッチをまねることができる点から、人間は生まれつきある程度の音程感覚を持っていると考えられます。ただし、言語の発達過程で音楽的な音程を意識する機会が少ないと、音程のズレが修正されないまま成長し、音痴になりやすくなります。

•生まれつきの音痴（先天的な音感障害）はほとんどない。
•多くの音痴は後天的な学習不足や間違った発声習慣によるもの。
•訓練次第でほとんどの人は音痴を克服できる。

つまり、ほとんどの場合、「生まれつき音痴」ではなく「適切な練習をしなかったために音痴になる」ということが分かります。

4.なぜ音痴になったのか？

生まれた時には音痴ではなかったはずの人が、なぜ時が経つにつれ音感がずれてしまうのか、その理由は大きく分けて環境的要因と身体的要因 があります。

1.環境的要因（後天的な影響）

①音楽的な刺激が少ない環境
•幼少期に歌や音楽をあまり聴かず、音程を意識する機会が少ないと、音感が育ちにくくなります。
•特に、言語が抑揚の少ない単調な発音の場合、相対音感（音と音の関係を認識する能力）が発達しづらい傾向があります。

②間違った音程を覚えてしまう
• 幼少期に親や周囲の人が音程を外して歌っていると、それが正しいと認識してしまうことがあります。
•家族全員がズレた音程で歌う→それが正しいと学習→そのまま音程がズレる。

③大きすぎる声で歌う環境
•声量を重視する文化（応援歌・軍歌・合唱など）では、音程よりも「勢い」が重視され、正確な音程を意識しにくくなることがあります。
•大きな声で歌うと喉が締まりやすく、ピッチがズレやすい。

④ヘッドホンやイヤホンで大音量で聴く習慣
•片耳だけで音楽を聴くと、音のバランスが崩れ、音感がズレやすくなります。
•常に大音量で聴くと、自分の声とのバランスが取れず、音程を正しく調整できなくなることがあります。

⑤言語の影響（母語が音感に影響）
•音の高低を重視する言語（中国語・タイ語など）を話す人は、音程の認識が鍛えられやすい。
•モノトーンな言語環境（英語・ドイツ語など） では、音程の認識が発達しにくいことがある。

2.身体的要因（個人の特徴）

①自分の声を正しく聴き取れない（骨伝導の影響）
•自分の声は骨伝導で聴こえるため、他人が聴く声と違う。
•そのため、録音して聴く習慣がないと自分の音程のズレに気付きにくい。

②発声のコントロールが未発達
•声帯のコントロールが未熟だと、狙った高さに声を当てられない。
•特に「低い音から高い音へ移行する」場面でズレやすい。

③聴覚の感度の個人差
•先天的に「周波数の識別が苦手」な人（先天性音楽失認＝アムジア）は、ごく少数ながら存在する。
•しかし、ほとんどの人は訓練によって矯正可能。

5.残念ながら生まれつき音痴な人も存在する

先天性音楽失認（アムジア）は、音楽に関連する音を識別したり、感覚的に認識したりする能力に障害がある状態を指します。具体的には、音楽を聴いてもそのメロディやリズム、音程などを理解することができず、音楽の感覚に対して反応が極めて乏しくなります。

アムジアの特徴

•音程の認識ができない
音楽のメロディーや音程がズレていると感じても、正しい音程を識別したり、調整したりする能力に欠けます。例えば、ピアノで音を弾いた際に、どの音が高いか低いかを識別できないことがあります。
•音楽の構造を理解できない
メロディやリズム、ハーモニーの変化を認識するのが難しいため、音楽の意味や感情的な影響を十分に感じ取れないことがあります。音楽を聴いても、リズムやメロディに感動したり、共鳴したりすることが少ないです。
•歌や楽器の演奏が難しい
メロディに合わせて歌う、または楽器で音楽を演奏することが難しく、音程が合わないことが多いです。歌っているときに音程のズレが直らない、またはリズムに乗ることができないことがあります。

アムジアの原因

• 脳の特定の部位の障害
アムジアは、音楽に関する処理を担当する脳の領域、特に 右半球 に損傷があることが原因とされています。音楽を認識するには、視覚、聴覚、運動などを統合的に処理する脳のネットワークが関与しており、このネットワークに問題が生じることで、音楽の認識に障害が生じます。
• 遺伝的要因
アムジアは先天的な障害であり、遺伝的な要因が関与していると考えられています。家族に音楽に関する感覚に問題を抱える人が多い場合、遺伝的な素因が影響している可能性があります。

アムジアの診断

アムジアは、通常、音楽的なテストや聴覚検査を通じて診断されます。これには、音楽のメロディを聴いてその音程の違いを認識する能力を測るテストなどが含まれます。また、音楽の認識における脳の活動を調べるために、脳画像技術（fMRIなど）が使われることもあります。

アムジアの治療

アムジア自体は治療が難しいとされていますが、音楽の理解や演奏の練習を通じて、代替的な方法で音楽を楽しむ方法を学ぶことができる場合もあります。また、音楽療法や音楽的な認識訓練などのリハビリが行われることもあります。

重要なポイント
•アムジアは「音楽を感じる能力に関する障害」であり、音感や音楽の楽しみ方に深い影響を与えますが、音楽の好き嫌いや音楽の学習に完全に関係しないわけではありません。音楽以外の認知機能には影響がない場合が多いため、言語や数学的な能力などは通常通り発達することが一般的です。

アムジアの予後
•後天的な音楽失認（脳損傷などによる）とは異なり、先天的なアムジアはその後の音楽学習や音程認識能力に大きな制限をもたらしますが、通常、日常生活における基本的な機能は障害されることはありません。

このように、アムジアは非常にまれであり、音楽に関する認識や表現に特別な困難がある場合に考えられる疾患です。