曲の途中でキーが変わるのは「転調」、カラオケで歌いやすいキーに変えるのは「移調」/日本音楽能力検定協会

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日本音楽能力検定協会です。
今回は「転調」と「移調」についてです。

音楽理論において、「転調」と「移調」はどちらも楽曲のキー(調)を変える概念ですが、その目的や方法には大きな違いがあります。
本記事では、それぞれの定義、種類、理論的な背景、実際の使用例、作曲や演奏における活用方法まで、練習問題の出題も兼ねて詳しく解説させていただきます。

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1.転調(Modulation)とは

転調とは、楽曲の途中で調(キー)を変えることを指します。通常、転調は曲の構成の一部として意図的に行われ、楽曲の雰囲気や展開を劇的に変化させるために用いられます。

転調の目的

転調を行う目的はジャンルや楽曲により様々ですが、主な理由として以下のようなものが挙げられます。
• 曲の雰囲気を変える(例:明るい雰囲気から切ない雰囲気へ)
• 楽曲のクライマックスを強調する(例:ラストのサビで転調して高揚感を演出)
• 長い曲で単調になるのを防ぐ
• 歌手の声域に合わせるために一時的にキーを変更する
• 異なる調の間の橋渡しをする

転調の種類

転調にはいくつかの異なる方法があり、それぞれの特徴を理解することが重要です。

(1)近親調転調
近親調とは、元の調と関係が近い調(五度圏上で隣接する調)への転調を指します。例えば、Cメジャーの近親調は以下のようになります。
• 平行調(同じ音階の短調・長調):Aマイナー
• 属調(完全五度上):Gメジャー
• 下属調(完全五度下):Fメジャー
• 平行調の属調・下属調:Eマイナー、Dマイナー

近親調転調は、共通する音が多いため自然に行うことができます。クラシック音楽では非常に一般的です。

(2)遠隔調転調
遠隔調とは、共通する音が少ない調(例えば、CメジャーからF#メジャーなど)への転調を指します。この場合、転調の前後で突然雰囲気が変わるため、印象的な効果を生み出します。ポップスやジャズでは、意外性を持たせるために使われることが多いです。

(3)同主調転調
同じ主音(例えばC)を持つが、長調と短調が異なる場合(Cメジャー ⇔ Cマイナー)の転調を指します。これは、明るい雰囲気から暗い雰囲気、またはその逆に移行する際に使われます。

(4)平行調転調
長調と短調で同じ音階を持つ関係(Cメジャー ⇔ Aマイナー)間の転調を指します。自然に転調が行え、和声的な変化を加えることができます。

(5) 半音上げ転調
特にポップスやロックでよく使われる手法で、曲の終盤やサビで半音(1つのセミトーン)上げることで高揚感を演出します。例:Cメジャー ⇒ C#メジャー

2.移調(Transposition)とは

移調とは、楽曲全体を別のキーに変えることを指します。つまり、元の音の関係性を維持したまま、すべての音を同じ度数で移動させます。
カラオケなどで歌う前にご自身の歌いやすいキーに変更する行為がまさに移調です。

移調の目的

移調を行う主な理由は以下の通りです。
• 歌手の声域に合わせる(高すぎる曲を低く、またはその逆)
• 楽器の特性に合わせる(特定の楽器で演奏しやすいキーに変更)
• 特定の演奏技法を活かす(ギターの開放弦を活用するためにキーを変更)
• 演奏しやすさを考慮する(例えば、BメジャーよりもCメジャーの方が簡単)

移調の方法

移調は、元の音の相対的な関係をそのままに、全ての音を上げたり下げたりすることで行われます。例えば、Cメジャーの楽曲をDメジャーに移調すると、すべての音が全音(2つの半音)上がります。

移調の方法には、以下のようなものがあります。

(1)楽譜をそのまま移動

・カノン進行(C-G-Em-Am-F-C-F-G)を他のキーに移調する場合
キーC:C-G-Am-Em-F-C-F-G
キーD:D-A-Bm-F#m-G-D-G-A
キーE:E-B-C#m-G#m-A-E-A-B
キーF:F-C-Dm-Am-B♭-F-B♭-C
キーG:G-D-Em-Bm-C-G-C-D
キーA:A-E-F#m-C#m-D-A-D-E
キーB:B-F#-G#m-D#m-E-B-E-F#

・丸サ進行を他のキーに移調する場合
キーC:FM7-E7-Am7-C7
キーD:GM7-F#7-Bm7-D7
キーE:AM7-G#7-C#m7-E7
キーF:B♭M7-A7-Dm7-F7
キーG:CM7-B7-Em7-G7
キーA:DM7-C#7-F#m7-A7
キーB:EM7-D#7-G#m7-B7

・有名なクリシェ進行を他のキーに移調する場合
キーC:C-CM7/B-C7/B♭-A7-Dm-DmM7/C#-Dm7/C-E7/B-Am-AmM7/G#-Am7/G-D7/F#-F-G-C
キーD:D-DM7/C#-D7/C-B7-Em-EmM7/D#-Em7/D-F#7/C#-Bm-BmM7/A#-Bm7/A-E7-G#-G-A-D
キーE:E-EM7/D#-E7/D-C#7/F#m-F#mM7/F-F#m7/E-G#7/D#-C#m-C#mM7/C-C#m7/B-F#7/A#-A-B-E
キーF:F-FM7/E-F7/E♭-D7-Gm-GmM7/F#-Gm7/F-A7/E-Dm-DmM7/C#-Dm7/C-G7/B-B♭-C-F
キーG:G-GM7/F#-G7/F-E7-Am-AmM7/G#-Am7/G-B7/F#-Em-EmM7/D#-Em7/D-A7/C#-C-D-G
キーA:A-AM7/G#-A7/G-F#7-Bm-BmM7/A#-Bm7/A-C#7/G#-F#m-F#mM7/F-F#m7/E-G7/D#-D-E-A
キーB:B-BM7/A#-B7/A-G#7-C#m-C#mM7/C-C#m7/B-D#7/A#-G#m-G#mM7/F#-G#m7/F-A7/F-E-F#-B

(2) カポタストを利用
ギターなどではカポタストを利用することで手軽に移調することが出来ます。
例えばC#を押さえなければいけない曲でカポタストを1フレットに装着すると、通常のCを押さえれば実際にはC#の音が鳴るため、演奏が楽になります。
C#-G#-A#m-Fm-F#-C#-F#-G#というコード進行の場合、1フレットにカポを付けると
C-G-Am-Em-F-C-F-Gと弾けば、実際には上記のコードが鳴っていることになります。


(3)移調楽器を利用
一部の楽器(例:B♭クラリネット、E♭アルトサックス)は、実音と楽譜上の音が異なります。移調楽器の演奏者は、自分の楽器に合ったキーに移調して演奏します。

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3.初歩的な転調のやり方

ここまでに学んだように、移調というのは曲のキー自体を変更することで歌いやすくしたり演奏しやすくするために利用されますが、転調は曲を盛り上げたり雰囲気を変えるために利用されます。
しかし、作曲初心者の方にとって転調を意図的に入れることは非常に難しく感じると思います。
ここでは初歩的な転調のやり方をご紹介いたします。
都合上いくつかの専門用語を使用しますが、実際にその言葉自体は覚える必要はありませんので、ご自身が曲を作る中で使えそうな転調パターンを見つけてみてください。

1.ダイアトニック・モジュレーション(共通コードを使う)

現在のキーと新しいキーの両方に共通するコードを利用して転調する方法です。
例:Cメジャー → Gメジャー
• Cメジャーのダイアトニックコード: C – Dm – Em – F – G – Am – Bdim
• Gメジャーのダイアトニックコード: G – Am – Bm – C – D – Em – F#dim
• 共通コード: C, Em, G, Am
• 例えば、
C → Am → D → G と進行すると、Dがドミナント(V)として機能し、自然にGメジャーへ転調する。

2.ドミナント・モジュレーション(V7を使う)

転調先のキーのドミナント(V7)を急に挿入して、新しいキーへ導く方法です。
例:Cメジャー → Dメジャー
• Cメジャー: C – Dm – Em – F – G – Am – Bdim
• Dメジャー: D – Em – F#m – G – A – Bm – C#dim
• 方法: G(CメジャーのV)をA7(DメジャーのV7)に置き換える
C → F → A7 → D
A7がDメジャーのドミナントとして働き、自然にDメジャーへ転調する。

3.パラレル・モジュレーション(同主調の転調)

同じ主音を持つメジャーとマイナーの間で転調する方法です。
例:Cメジャー → Cマイナー
• Cメジャー: C – Dm – Em – F – G – Am – Bdim
• Cマイナー: Cm – Ddim – Eb – Fm – G – Ab – Bb
• 方法: Cメジャーの楽曲の途中で、Cマイナーのコード(Cm, Fm, Bbなど)を入れる。
例えば、C → G → Cm → Fm → G → Cm という流れで自然に転調する。

4.ステップ・モジュレーション(半音 or 全音上げる)

曲の途中で半音または全音上げて転調する方法。特にポップスでよく使われる。
例:Cメジャー → C#メジャー
• Cメジャー: C – Dm – Em – F – G – Am – Bdim
• C#メジャー: C# – D#m – Fm – F# – G# – A#m – Cdim
• 方法: 一旦V7で締めて、新しいキーのIにジャンプする。
C → G → C → G → C# → F# → G# → C#
これにより、盛り上がる感じで転調できる。
※ステップモジュレーションに関しては特に理論的な解釈は必要ありません。乱暴な言い方をしてしまうと、いきなり半音上がるだけという状態です。しかしこの転調手法は非常に効果的で、日本の有名曲などでもラストの大サビを盛り上げるために多用されています。

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